コールセンターのAI活用事例7選|応対要約・FAQ作成を実務検証

コールセンターのAI活用事例7選|応対要約・FAQ作成を実務検証

コールセンターで生成AIに任せられるのは、いまのところ通話の要約やFAQの下書きといった「情報を整理する工程」までです。返金の可否や回答期限といった顧客への約束は、人が持ったままにしておく必要があります。この線引きを言葉だけで説明しても腹落ちしにくいので、本記事では実際にAIへ通話記録とクレーム対応を投げてみて、どこまで整理でき、どこで間違えたのかを出力そのままで示します。

先に検証条件を明かしておきます。検証にはChatGPT Workを使用しました。入力した通話記録やクレーム文面はすべて検証用に作った架空データで、氏名・電話番号・メールアドレス・受付番号も架空値です。実際の顧客データは一切使っていません。また、導入率や削減率といった数値、効果の断定はこの記事では扱いません。同じプロンプトでも結果は環境やモデルによって変わるため、自社で使う前には必ず人の目で確かめてください。

目次

コールセンターのAI活用事例7選:どの業務なら任せられる?

現場で話題になる活用先を、任せられる範囲と人が持つべき判断で整理すると次のようになります。

業務AIに任せる範囲人が持つ判断
1. 通話の文字起こし音声をテキスト化し、後工程の材料にする固有名詞や商品名の誤変換の修正
2. 応対要約指定した項目に沿って通話内容を整理する要旨の抜け漏れと事実誤認の確認
3. FAQ・ナレッジ化問い合わせからFAQ候補を抽出する公開してよい範囲と正式回答の決定
4. 一次回答ドラフト返信文の下書きを作る可否・期限・金額に関わる約束の是非
5. チャットボットの回答案既存ナレッジをもとに回答文を用意する回答範囲の線引きと有人への引き継ぎ条件
6. 応対品質の振り返り応対記録から論点や改善余地を並べる評価そのものとフィードバックの伝え方
7. 新人研修のロールプレイ顧客役として想定問答を出す実務ルールとの整合、到達水準の判断

共通しているのは、AI側に寄せているのがどれも「下書き」であることです。この記事では、このうち2番の応対要約と4番の一次回答ドラフトを、実際に動かして確かめました。

応対要約はどこまで生成AIに任せられる?

1つめの検証では、架空の通話記録を渡して、決められた6項目に整理させました。狙いは2つあります。指定した枠組みどおりに整理できるかどうかと、入力に含めた個人情報を出力に残さずにいられるかどうかです。

入力した指示文はこちらです。

個人情報を伏せ、①問い合わせ要旨、②顧客感情、③対応済み、④未解決、⑤次回アクション、⑥FAQ候補に整理。事実外は補わない。
架空記録:商品Aの外箱へこみ、中身未開封。写真3枚をメール送付するよう案内、受付番号発行。品質担当が写真確認後2営業日以内に連絡。顧客は週末利用のため急いでいる。
(入力には架空の氏名・電話番号・メールアドレス・受付番号を含む)
ChatGPTに架空コールセンター通話記録を入力した画面
ChatGPTに架空コールセンター通話記録を入力した画面

返ってきた出力は、外箱にへこみがあり中身は未開封であること、顧客が週末利用のため急いでいること、写真送付の案内は済んでいること、破損の程度と交換可否が未解決であること、品質担当が写真を確認したうえで連絡する予定であること、配送箱の破損に関するFAQ候補が作れることの6点にまとまっていました。入力に含めていた架空の氏名・電話番号・メールアドレス・受付番号は、いずれも出力側に現れませんでした。入力になかった補償内容や交換可否を勝手に足すこともありませんでした。

ChatGPTが架空通話を要約し次回対応とFAQ候補を示した画面
ChatGPTが架空通話を要約し次回対応とFAQ候補を示した画面

この範囲だけを見れば、要約は任せてよい工程だと言えます。ただしこれは1件の架空記録での結果です。個人情報が出力に残らなかったのは指示があったからで、指示を省けば同じ結果になる保証はありません。実運用では、そもそも何を入力してよいかを先に決めておくほうが確実です。

規程が確認できない問い合わせで、AIは何を間違えるのか?

2つめの検証では、もう少し踏み込んだ場面を渡しました。「定期便を解約したつもりなのに今月分が発送された。未開封なので全額返金してほしい。今日中に返事がほしい」という架空の要求への返信を、丁寧で簡潔に作らせています。

次の問い合わせへの返信を、丁寧で簡潔に作成してください。
「定期便を解約したつもりなのに今月分が発送されました。未開封なので全額返金してほしいです。今日中に返事がほしいです」

初回の出力は、文面としては整っていました。問題は中身のほうで、解約履歴も発送日時も返品・返金規程も確認していない段階なのに「本日中に連絡します」と回答期限を約束していた点です。実際の現場でそのまま送ってしまえば、社内で確認が終わらないうちに期限だけが独り歩きします。

ChatGPTが返金要求へ本日中の回答を約束した初回画面
ChatGPTが返金要求へ本日中の回答を約束した初回画面

そこで、前提が未確認であることを明示した修正指示を出しました。

解約履歴、発送日時、返品・返金規程がいずれも未確認です。返金を約束しないでください。
顧客には受付済みであることと、確認後に回答する旨だけを伝えてください。
あわせて、担当部署へのエスカレーションメモを分けて作成してください。

修正後の出力は、顧客向けとして「お問い合わせを受け付けました。解約履歴、発送日時および返品・返金規程を確認のうえ、あらためて回答します。現時点では返金可否をご案内できません」と伝える文面になり、社内メモ側には解約受付の有無、注文確定と発送のタイミング、解約期限、返品返金規程、未開封状態の確認という確認項目が並びました。

ChatGPTが受付通知と担当部署への確認メモを示した画面
ChatGPTが受付通知と担当部署への確認メモを示した画面

変わったのは次の2点です。

  • 「本日中に連絡」と期限を約束していた → 期限に触れず、受付済みと確認後回答のみを伝える形に変えた
  • 顧客向け文面と社内向けの確認事項が1つの文章に混ざっていた → 顧客向け通知と社内エスカレーションメモの2部構成に分けた

ここから読み取れるのは、AIが嘘をつくというより、空欄を埋めようとするということです。前提が抜けていても文章としては成立させにくるので、未確認であることを人が明示しない限り、可否や期限が勝手に埋まります。つまり防ぎ方は精度の問題ではなく、指示の書き方の問題です。

今日から試すための3つの決めごと

小規模なセンターでも、次の3つを先に決めておけば試し始められます。

  1. 対象業務を1つに絞る:まずは応対要約だけ、あるいはFAQ候補の抽出だけに限定します。顧客に直接届く文面から始めないほうが安全です。
  2. 入力ルールを決める:氏名・電話番号・受付番号などを入力前に伏せるのか、そもそも入力しないのかを文書化します。利用しているサービスの規約とデータの取り扱い設定も、導入前に自社で確認してください。
  3. 確認担当を決める:出力をそのまま使わず、誰が最終確認するかを決めます。特に可否・期限・金額が含まれる文面は、人の確認を必須にします。

よくある質問

コールセンターで生成AIはどの業務から使うのが現実的ですか?

通話の要約やFAQ候補の抽出など、顧客に直接届かない下書き工程からが現実的です。今回の検証でも、項目を指定した整理は指示どおりに機能しました。

個人情報を含む通話記録をAIに入力してよいですか?

本記事の検証はすべて架空データで行っており、実データの可否は判断していません。利用サービスの規約とデータ取り扱い設定、社内規程を確認したうえで、入力前のマスキング方針を決めてください。

AIが誤った約束をするのはどんな場面ですか?

解約履歴や返品・返金規程のように、判断の前提が確認できていない場面です。今回は回答期限を勝手に約束する出力が出ました。未確認であることを指示に明記すると、約束のない受付通知に変わりました。

失敗した出力はどう直せばよいですか?

表現を直すのではなく、前提と禁止事項を足すのが早いです。「何が未確認か」「何を約束しないか」「顧客向けと社内向けを分けるか」を指示に書き加えるだけで、出力の構造が変わりました。

まとめ

コールセンターの生成AI活用は、要約・FAQ化・下書き作成といった整理工程から始めるのが現実的です。今回の架空データでの検証では、項目を指定した応対要約は指示どおりに整理でき、個人情報も出力に残りませんでした。一方で、規程や履歴が未確認のまま返信を作らせると、回答期限を勝手に約束する出力が出ました。任せる範囲を業務単位で決め、可否と期限に関わる判断は人が持つ。この線引きさえ守れば、小さく試し始められます。自社で採用する際は必ず人の目で結果を確かめてください。

AIの導入や活用方法について迷ったら、まずは無料でご相談ください。

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この記事を書いた人

株式会社MoMoの広報担当、桃乃愛です。
AIに関する知識や活用法、AI時代に求められるマインドセット、AI時代のキャリアやスキルアップのヒントなどを発信中!
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