「毎日のメール処理に追われ、本来の業務に集中できない」「定型業務が多すぎて、もっと創造的な仕事に時間を使いたい」——。多くのビジネスパーソンが抱えるこのような悩みを解決する、革新的なツールが登場しました。2025年12月、Googleは「Google Workspace Studio」の正式リリースを発表しました。これは単なる自動化ツールではありません。最新のAIモデル「Gemini 3」を搭載し、プログラミングの知識がなくても、自然言語で指示するだけで業務を自動化する「AIエージェント」を誰でも簡単に構築できるプラットフォームです。
本記事では、Google Workspace Studioの活用事例、導入のメリット・デメリット、さらには投資対効果(ROI)の計算方法まで、導入を検討する上で必要な情報を網羅的に解説します。この記事を読めば、あなたの組織でどのように業務効率化を実現できるか、明確なイメージを描けるようになるでしょう。
Google Workspace Studioの3つの特徴と仕組み
Google Workspace Studioがなぜこれほど注目されているのか、その理由は3つの際立った特徴に集約されます。これらの特徴を理解することで、本ツールのポテンシャルを最大限に引き出すことが可能になります。
特徴1:Gemini 3 × Google Workspace統合
Google Workspace Studioの最大の特徴は、Googleの最新AIモデルGemini 3と、Gmail、Google Sheets、Google Drive、Google Chatといった日常的に利用するGoogle Workspaceアプリケーション群が緊密に統合されている点です。これにより、従来の自動化ツールでは困難だった、AIが文脈を理解し、柔軟に判断しながら作業を進める高度な自動化が実現します。
例えば、「緊急度の高いメールが来たら、内容を要約してChatで通知して」といった曖昧な指示でも、AIがメールの内容を分析し、緊急度を判断し、適切な要約を生成して通知するという一連のプロセスを自動で実行します。複雑な条件分岐もプログラミングではなく、自然言語で指示できるのが大きな強みです。
特徴2:ノーコード構築
第二の特徴は、プログラミングの知識を一切必要としない「ノーコード」でAIエージェントを構築できる点です。直感的なインターフェースを通じて、あらかじめ用意されたテンプレートを選択したり、あるいは「〇〇を自動化したい」と自然言語で入力したりするだけで、基本的なエージェントをわずか数分で作成できます。
これにより、IT部門の専門家だけでなく、現場の業務担当者自身が、自らのニーズに合わせて業務効率化ツールを開発・導入することが可能になります。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進において、現場主導のボトムアップ型改善を加速させる強力な武器となるでしょう。
特徴3:追加料金なし
そして第三に、Google Workspace Studioは追加料金なしで利用できる点が挙げられます。対応するGoogle Workspaceプラン(Business、Enterprise、Educationの各エディション)を契約していれば、その料金内で本機能を利用できます。
多くの高機能な自動化ツールが別途ライセンス費用を要求する中で、これは非常に大きなメリットです。特に、コストを抑えながら業務効率化を進めたい中小企業やスタートアップにとって、導入のハードルを大幅に下げる要因となります。
Google Workspace Studioでできること:エージェントの仕組み
Google Workspace Studioで自動化を実現する「エージェント」は、「Starter(トリガー)」、「Actions(処理内容)」、そしてその中の「Steps(個々の処理)」という3つの要素で構成されています。このシンプルな構造を理解することで、様々な業務を自動化するロジックを組み立てることができます。
Starter(トリガー)の種類
「Starter」は、エージェントが動き出す「きっかけ」となるイベントです。例えば、「特定の条件を満たすメールを受信したとき」や「毎週金曜日の17時になったとき」といった、様々なイベントをトリガーとして設定できます。
| トリガーの分類 | 具体的なトリガーの例 |
|---|---|
| Gmail | 特定の送信者からのメール受信、特定のラベルが付与されたとき |
| Google Chat | 特定のスペースにメッセージが投稿されたとき、エージェントがメンションされたとき |
| Google Drive | 特定のフォルダに新しいファイルが作成されたとき |
| スケジュール | 毎日9時、毎週月曜日の朝、毎月1日など、定期的な実行 |
| Google Forms | 新しい回答が送信されたとき |
Actions(処理内容)とStepsの例
「Actions」は、トリガーによって開始されたエージェントが実際に行う一連の処理全体を指します。そして、その中に含まれる個々の具体的な処理が「Steps」です。以下のような多種多様なStepを組み合わせることで、複雑なワークフローも自動化できます。
- Geminiによる処理: 受け取った情報(メール本文、ドキュメントなど)をGeminiに渡し、要約、分析、翻訳、感情分析、情報抽出などを行わせる。
- Gmail操作: 新規メールの送信、受信メールへの返信、ラベルの付与、スターの設定など。
- Google Sheets / Docs操作: スプレッドシートへのデータ追記、ドキュメントの新規作成や編集。
- 外部ツール連携: SalesforceやAsana、Jiraといったサードパーティのアプリケーションと連携し、データの参照や更新を行う(Webhookを利用)。
実装の基本的な流れ
実際にエージェントを構築する際の基本的な流れは、以下の5ステップです。
- トリガーの設定: 何をきっかけに自動化を開始するかを定義します。
- 処理ステップの追加: 実行したい処理を順番にStepとして追加していきます。
- 変数で情報を受け渡し: 前のStepの出力(例:メールから抽出した顧客名)を、後のStepの入力として利用(変数で受け渡し)します。
- テスト実行: 作成したエージェントが意図通りに動作するかをテスト環境で確認します。
- 本番運用: テストで問題がなければ、本番環境での運用を開始し、定期的に動作ログを確認します。
Google Workspace Studioの活用事例20選
Google Workspace Studioの真価は、その具体的な活用事例にあります。ここでは、様々な部門や業種で実際にどのような業務効率化が実現できるのか、20の具体的な事例を紹介します。
営業部門の活用事例(5事例)
営業部門では、顧客対応の迅速化と、レポート作成などのノンコア業務の削減が重要です。
1. 営業メール自動分類と優先度付け
- トリガー: 新しいメールを受信したとき。
- 処理: Geminiがメール本文を分析し、内容に基づいて「緊急」「要返信」「資料請求」などのラベルを自動で付与します。
- 効果: 重要なメールを見逃すことなく、対応の優先順位付けが容易になり、メール処理にかかる時間を最大60%削減します。
2. 顧客問い合わせの自動初期対応
- トリガー: Webサイトの問い合わせフォームからメールを受信したとき。
- 処理: 問い合わせ内容をAIが分析し、適切な一次回答を自動で返信。同時に関係部署のChatスペースに通知し、担当者を割り当てます。
- 効果: 顧客への初期対応時間を90%以上短縮し、顧客満足度を向上させます。
3. 営業週報の自動生成
- トリガー: 毎週金曜日の17時にスケジュール実行。
- 処理: Salesforceやスプレッドシートから個人の営業活動データを取得し、要約と分析を加えた週報を自動で生成。Google Docs形式で保存し、上長にメールで通知します。
- 効果: 営業担当者がレポート作成に費やしていた時間を、週あたり2時間からわずか10分に短縮します。
4. 提案資料の自動作成
- トリガー: CRM(顧客管理システム)に新しい商談が登録されたとき。
- 処理: 顧客情報、業界、過去の類似案件データを基に、提案資料のドラフトをGoogle Slidesで自動生成します。
- 効果: 提案資料の作成にかかる時間を80%削減し、より質の高い提案内容の検討に集中できます。
5. 営業フォローアップの自動化
- トリガー: 提案書を送付してから7日間、返信がない場合。
- 処理: 状況に応じたフォローアップメールを自動で送信し、営業担当者のChatに「〇〇社へのフォローアップを実施しました」と通知します。
- 効果: フォローアップの漏れを100%防止し、失注リスクを低減します。
人事・採用部門の活用事例(4事例)
人事・採用部門では、煩雑な事務作業を自動化し、候補者や従業員とのコミュニケーションに注力することが求められます。
6. 採用面接日程の自動調整
- トリガー: 候補者から面接希望日程がメールで返信されたとき。
- 処理: メール内容から候補日時を抽出し、面接官のGoogle Calendarの空き時間と照合。最適な日時を候補者に提案し、確定後は自動でカレンダーに招待を送信します。
- 効果: 面接日程の調整にかかるメールのやり取りを完全に自動化し、採用担当者の負担を大幅に軽減します。
7. 応募者情報の自動分類と評価
- トリガー: 採用管理システム(ATS)や応募フォームに新しい応募があったとき。
- 処理: 提出された職務経歴書や履歴書をGeminiが読み込み、スキル、経験、学歴などの情報を構造化データとして抽出。募集要件との適合度を自動でスコアリングし、スプレッドシートに記録します。
- 効果: 書類選考の初期スクリーニングにかかる時間を70%削減し、有望な候補者の見極めを迅速化します。
8. 入社手続きの自動化
- トリガー: 採用が決定し、ステータスが「内定承諾」に変更されたとき。
- 処理: 入社に必要な書類のリストと提出依頼を自動でメール送信。提出状況をスプレッドシートで管理し、未提出者にはリマインダーを自動で送信します。
- 効果: 入社手続きにかかる期間を平均30日から5日に短縮し、新入社員のオンボーディング体験を向上させます。
9. 研修進捗の自動追跡と通知
- トリガー: eラーニングシステムから研修の進捗レポートが定期的に出力されたとき。
- 処理: レポート内容を自動で集計・分析し、進捗が遅れている受講者に対して、個別の状況に応じた励ましのメッセージやリマインダーをChatやメールで自動送信します。
- 効果: 研修管理者の手作業をほぼゼロにし、受講者の学習意欲を維持・向上させます。
マーケティング部門の活用事例(4事例)
マーケティング部門では、コンテンツ制作の効率化とデータ分析の自動化が生産性向上の鍵となります。
10. ニュースレターの自動生成・配信
- トリガー: 毎週月曜日の朝9時にスケジュール実行。
- 処理: 指定したニュースサイトやブログのRSSフィードから最新記事を取得。Geminiが各記事を要約し、ニュースレター形式のドラフトをGoogle Docsで作成。確認後、ワンクリックでメーリングリストに配信します。
- 効果: ニュースレターの作成時間を3時間から30分に短縮し、より戦略的なコンテンツ企画に時間を割けるようになります。
11. SNS投稿コンテンツの自動生成
- トリガー: 自社ブログに新しい記事が公開されたとき。
- 処理: 公開されたブログ記事の内容を基に、X(旧Twitter)、Facebook、LinkedInなど、各プラットフォームの特性に合わせた複数の投稿文案を自動で生成。担当者のChatに提案として送信します。
- 効果: SNSの運用工数を50%削減し、エンゲージメントの高いコンテンツを安定的に発信できます。
12. 顧客フィードバックの自動分析
- トリガー: アンケートフォームへの回答や、サポート窓口へのフィードバックメールを受信したとき。
- 処理: Geminiがテキスト内容を分析し、「ポジティブ」「ネガティブ」といった感情を判定。さらに「機能要望」「価格」「サポート」などのカテゴリに自動で分類し、スプレッドシートにリアルタイムで集計します。
- 効果: 顧客の声の分析にかかる時間を80%削減し、製品やサービスの改善に迅速に繋げます。
13. キャンペーン効果測定レポートの自動作成
- トリガー: 毎月1日にスケジュール実行。
- 処理: Google Analytics、各種広告プラットフォームのAPIから前月のキャンペーンデータを自動で取得。データを統合・分析し、主要KPIをまとめたレポートをGoogle Slidesで自動生成し、関係者に共有します。
- 効果: レポート作成にかかる時間を5時間からわずか30分に短縮し、データに基づいた迅速な意思決定を支援します。
経理・事務部門の活用事例(4事例)
経理・事務部門では、申請業務の効率化と、ミスが発生しやすい手作業の削減が重要です。
14. 経費申請の自動審査
- トリガー: 従業員が経費申請フォームを送信したとき。
- 処理: 申請内容を社内規定と照合し、Geminiが金額の上限、勘定科目の妥当性などを自動でチェック。規定内の申請は自動で承認し、例外的なケースのみ経理担当者に通知します。
- 効果: 経費の審査・承認にかかる時間を70%削減し、人的ミスを95%削減します。
15. 請求書の自動生成・送付
- トリガー: プロジェクト管理ツールでタスクが「完了」ステータスになったとき。
- 処理: プロジェクト情報や契約内容に基づき、請求書をGoogle Docsで自動生成。PDFに変換し、取引先にメールで自動送付します。同時に、会計システムにもデータを記録します。
- 効果: 請求書の作成・送付にかかる時間を90%以上削減し、請求漏れや遅延を防ぎます。
16. 月次決算レポートの自動作成
- トリガー: 毎月第3営業日にスケジュール実行。
- 処理: 各部門のスプレッドシートや会計システムからデータを自動で集計。前月比や予算比の分析を加え、月次決算レポートのドラフトをGoogle Slidesで作成し、経営陣に通知します。
- 効果: 月次決算レポートの作成にかかる時間を8時間から1時間に短縮し、より迅速な経営判断を可能にします。
17. 契約書管理と更新通知の自動化
- トリガー: Google Driveの契約書保管フォルダに新しいファイルが追加されたとき。
- 処理: Geminiが契約書の内容を読み取り、契約期間、更新日、自動更新の有無などの重要項目を抽出。スプレッドシートの管理台帳に自動で記録し、更新期限の3ヶ月前と1ヶ月前に関係者へ自動でリマインダーを送信します。
- 効果: 契約書の管理工数を削減し、更新漏れのリスクを100%排除します。
その他部門の活用事例(3事例)
Google Workspace Studioの活用範囲は、主要な部門に留まりません。
18. カスタマーサポート:問い合わせチケットの自動分類
- トリガー: ヘルプデスクシステムに新しい問い合わせが起票されたとき。
- 処理: 問い合わせ内容をGeminiが分析し、緊急度や問い合わせ内容(例:「技術的な質問」「契約に関する問い合わせ」)を判断。自動で優先度とカテゴリを設定し、適切な担当チームに割り振ります。
- 効果: オペレーターが手動で分類する手間を省き、顧客への初期応答時間を平均40%短縮します。
19. IT部門:セキュリティアラートの一次対応自動化
- トリガー: セキュリティ監視システムからアラートメールを受信したとき。
- 処理: アラートの内容を分析し、既知の軽微な問題であれば自動で対応処理を実行。未知の、あるいは重大なアラートの場合のみ、IT管理者のChatに即時通知します。
- 効果: 対応時間を50%短縮し、セキュリティインシデントへの迅速な対応を可能にします。
20. 企画部門:会議議事録の自動作成
- トリガー: 会議が終了し、Google Meetの録画がGoogle Driveに保存されたとき。
- 処理: 保存された録画から音声をテキストに変換(他のツールと連携)。そのテキストをGeminiが要約し、決定事項、担当者、期限(TODO)を抽出して議事録のドラフトをGoogle Docsで作成します。
- 効果: 議事録作成にかかる時間を85%削減し、会議後のアクションを迅速化します。
導入企業の成功事例
Google Workspace Studioは、すでに多くの企業で目覚ましい成果を上げています。ここでは、公式に発表されている具体的な成功事例を紹介します。
Kärcher社の事例:ドラフト作成時間を90%削減
世界的な清掃機器メーカーであるKärcher社は、Google Workspace Studioの早期導入企業の一つです。同社では、従来、複数のドキュメントから情報を収集し、新しいドラフトを作成・統合する作業に数時間を要していました。
Kärcher社は、Google Workspace Studioを活用してこのプロセスを自動化するエージェントを構築。その結果、数時間かかっていた作業をわずか2分に短縮することに成功しました。これは、作業時間にして90%もの削減に相当します。
この事例は、ドキュメント作成や情報集約といった、多くの企業で発生している時間のかかる定型業務が、Google Workspace Studioによって劇的に効率化される可能性を示しています。
アルファ版利用企業の実績:1ヶ月で2,000万件以上のタスクを処理
Google Workspace Studioが正式リリースされる前のアルファ版(旧称:Google Workspace Flows)の段階で、すでに多くの企業がその効果を実感していました。Googleによると、アルファ版の利用企業は、わずか30日間で2,000万件以上ものタスクをAIエージェントによって処理したと報告されています。
具体的な用途としては、以下のようなものが挙げられます。
- ステータスレポートの自動生成
- 法務部門における法的通知のトリアージ(優先順位付け)
- 出張申請の管理と承認フローの自動化
これらの実績は、Google Workspace Studioが特定の業務だけでなく、企業のあらゆる部門における多様な定型業務を自動化し、組織全体の生産性を向上させるポテンシャルを持つことを証明しています。
Google Workspace Studio導入のメリット・デメリット
Google Workspace Studioは非常に強力なツールですが、導入を検討する際には、そのメリットとデメリットの両方を正確に理解しておくことが重要です。
メリット
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| 1. 導入コストが低い | 追加料金なしで、Google Workspaceの契約プラン内で利用できます。高機能な自動化ツールを無料で始められるのは最大の魅力です。 |
| 2. 実装が簡単 | プログラミング知識が不要なノーコード設計のため、IT専門家でなくても現場の担当者が自ら業務改善ツールを構築できます。 |
| 3. セキュリティが堅牢 | Google Workspaceの標準セキュリティが適用されるため、企業の機密データが外部に流出するリスクを最小限に抑えられます。 |
| 4. Google Workspaceとの統合 | GmailやSheetsなど、普段使っているツールとシームレスに連携できるため、既存のワークフローをスムーズに拡張・自動化できます。 |
| 5. 高度なAI機能 | 最新のAIモデル「Gemini 3」を搭載しており、単純なルールベースの自動化では実現できない、文脈を理解した高度な判断が可能です。 |
デメリット
| デメリット | 詳細と対策 |
|---|---|
| 1. UI言語が英語 | 2025年12月現在、ユーザーインターフェース(UI)は英語のみです。ただし、プロンプトや処理対象は日本語に対応しており、今後の日本語化が予定されています。 |
| 2. 外部ツール連携の制限 | SalesforceやAsanaなど一部の主要ツールとは連携できますが、全てのSaaSと簡単に連携できるわけではありません。Webhookを利用すれば連携可能ですが、専門知識が必要です。 |
| 3. 実行結果の不確実性 | AIによる判断は100%正確とは限りません。そのため、会計処理や契約関連など、絶対にミスの許されない重要な業務の最終判断は、人間が確認するフローを組み込むことが推奨されます。 |
Google Workspace Studio導入ステップ
Google Workspace Studioの導入は、以下の5つのステップで進めることができます。簡単なものであれば、即日でAIエージェントを稼働させることも可能です。
ステップ1:前提条件の確認(5分)
まず、自社の環境がGoogle Workspace Studioを利用できる状態かを確認します。
- Google Workspaceプランの確認: Business、Enterprise、Educationのいずれかのエディションを契約しているか確認します。
- Geminiの有効化: Google Workspaceの管理者が、管理コンソールでGeminiを有効にしている必要があります。
- ブラウザ環境の準備: エージェントの作成はPCのブラウザで行います。
ステップ2:テンプレートから選択(10分)
最も簡単な始め方は、Googleが提供しているテンプレートを利用することです。「メールを要約してChatに通知する」「フォームの回答をスプレッドシートに記録する」といった一般的なユースケースがテンプレートとして用意されています。自社の業務に最も近いものを選択し、基本的な設定項目(通知先のChatスペースなど)を入力するだけで、エージェントの雛形が完成します。
ステップ3:エージェントのカスタマイズ(30分~)
テンプレートを基に、自社の業務に合わせて処理内容をカスタマイズします。トリガーの条件をより具体的に設定したり(例:「件名に『重要』と含まれるメールのみを対象とする」)、処理ステップを追加・編集したりします。AIへの指示(プロンプト)を調整することで、より精度の高い処理を実現できます。
ステップ4:テスト実行(15分)
作成したエージェントは、本番運用前に必ずテストを実行します。サンドボックス(検証環境)で、実際のデータに近いサンプルデータを使って意図通りに動作するかを確認します。エラーが発生した場合は、ログを確認し、処理ステップやプロンプトを修正します。
ステップ5:本番運用と改善(継続)
テストで問題がないことを確認したら、いよいよ本番環境での運用を開始します。運用開始後も、定期的に実行ログを監視し、エラーが発生していないか、期待通りの効果が出ているかを確認します。利用状況に応じて、さらに処理を効率化したり、新しい自動化を追加したりと、継続的にエージェントを改善していくことが重要です。
ROI計算方法と効果測定
Google Workspace Studioの導入効果を客観的に評価し、さらなる投資の意思決定に繋げるためには、投資対効果(ROI)を定量的に測定することが不可欠です。ここでは、その具体的な計算方法と測定指標を紹介します。
削減される工数の計算
最も分かりやすい効果は、定型業務にかかる時間の削減です。これは以下の計算式で算出できます。
年間削減コスト = (1件あたりの従来作業時間 – 1件あたりの自動化後作業時間) × 月間処理件数 × 12ヶ月 × 平均時給
具体例:営業週報の自動化
- 現状: 営業担当者10名が、それぞれ週に1回、1時間かけて週報を作成している。
- 自動化後: エージェントが10分で全自動作成。担当者の作業は確認のみで5分に短縮。
- 1人あたりの削減時間: 1時間 – 5分 = 55分/週
- チーム全体の年間削減時間: 55分 × 10人 × 4週 × 12ヶ月 = 26,400分 = 440時間/年
- 年間削減コスト: 440時間 × 3,500円(営業担当者の平均時給と仮定) = 1,540,000円
このように、一つの業務を自動化するだけで、年間150万円以上のコスト削減効果が生まれる可能性があります。
効果測定の指標
コスト削減以外にも、様々な指標で効果を測定することが重要です。
| 測定指標 | 測定方法 |
|---|---|
| 工数削減率 | (従来時間 – 自動化後時間) / 従来時間。業務効率化の度合いを示します。 |
| 処理件数 | エージェントの実行ログから、月間・年間の自動処理件数を集計します。 |
| エラー率削減 | (従来の手作業によるエラー数 – 自動化後のエラー数) / 従来のエラー数。品質向上への貢献度を示します。 |
| 顧客満足度・従業員満足度 | 顧客対応の迅速化や、従業員の単純作業からの解放が、満足度調査のスコアにどう影響したかを測定します。 |
Google Workspace Studioと競合ツール比較
業務自動化ツールは、Google Workspace Studio以外にも多数存在します。ここでは、代表的なiPaaS(Integration Platform as a Service)ツールであるZapier、Make、そしてMicrosoftのPower Automateと比較し、その違いを明確にします。
| 項目 | Google Workspace Studio | Zapier | Make | Power Automate |
|---|---|---|---|---|
| 料金 | 無料(Workspaceプランに含む) | 有料(月額$19.99~) | 有料(月額$9~) | 有料(月額$15~) |
| ノーコード | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
| AI機能 | ◎ (Gemini 3) | △(限定的、外部連携必要) | △(限定的、外部連携必要) | ○ (Copilot) |
| Google連携 | ◎ | ○ | ○ | △ |
| セキュリティ | ◎(Google標準) | ○ | ○ | ◎(Microsoft標準) |
| 学習コスト | △(UIが英語) | ◎(直感的) | ○(やや複雑) | △(多機能) |
Google Workspace Studioの優位性
この比較から、Google Workspace Studioの最大の優位性は、「Google Workspaceとの深い統合」と「高度なAI機能(Gemini 3)を無料で利用できる」点にあることがわかります。
- コスト面: 他のツールが有料であるのに対し、追加費用なしで始められるのは大きなアドバンテージです。
- AIの質: Gemini 3を標準で利用できるため、自然言語の理解や生成能力において、他のツールを一歩リードしています。
- 連携のスムーズさ: Google Workspace内でのデータ連携は、他のどのツールよりもスムーズで安定的です。
一方で、連携できる外部アプリケーションの種類においては、ZapierやMakeが数千種類に対応しているのに対し、Google Workspace Studioはまだ限定的です。Google Workspace内の業務を中心に自動化したい場合はStudioが最適ですが、多種多様なSaaSを連携させたい場合は、他のツールも検討の価値があります。
まとめと次のアクション
本記事では、Google Workspace Studioの基本的な仕組みから、20の具体的な活用事例、導入のメリット・デメリット、ROIの計算方法まで、その全貌を解説しました。
Google Workspace Studioは、単なる業務効率化ツールではありません。Gemini 3という強力なAIを搭載し、ノーコードで誰でも高度な業務自動化を実現できる、まさに「ビジネスの変革ツール」です。導入コストが低く、実装も簡単なため、大企業から中小企業、スタートアップまで、あらゆる組織がその恩恵を受けることができます。
営業、人事、マーケティング、経理といったあらゆる部門で、年間数百時間もの工数削減と、それに伴う大幅なコスト削減が期待できます。今こそ、あなたの組織でも、単純作業から解放され、より創造的で価値の高い仕事に集中するための第一歩を踏み出すときです。
次のステップ
- 自社の定型業務を洗い出す: まずは、あなたのチームで「時間がかかっている」「単純作業の繰り返しだ」と感じる業務をリストアップしてみましょう。
- テンプレートから試してみる: Google Workspace Studioを開き、提供されているテンプレートの中から、洗い出した業務に最も近いものを探して試してみましょう。
- 小規模な案件から始める: 最初から大規模な自動化を目指す必要はありません。「特定のメールにラベルを付ける」といった簡単な自動化から始め、成功体験を積み重ねることが重要です。
- 成功事例を社内で共有する: 小さな成功でも、その効果を社内で共有することで、他の部門にも自動化の動きが広がり、組織全体の生産性向上に繋がります。

