企業がAIを導入する際に活用できる補助金・助成金が存在します。これらの制度を利用することで、導入コストを軽減し、生成AIを効果的に活用できるチャンスが広がります。
生成AIは、企業の業務効率化やイノベーション創出において非常に有力なツールとなっています。特にChatGPTのような生成AIは、顧客対応やコンテンツ制作、データ分析など、幅広い業務に革新をもたらし、その導入が進んでいます。しかし、こうした新技術の導入にはコストがかかり、特に中小企業やAIを初めて導入する企業にとってはハードルが高いことが現実です。
この記事では、生成AI導入に役立つ最新の補助金・助成金情報をまとめ、企業が賢く活用できる方法を解説させていただきます。
生成AI導入のメリットと費用
生成AIの導入は、業務の大幅な効率化を実現するだけでなく、これまでにない新しいビジネスチャンスを生み出す可能性を秘めています。たとえば、ChatGPTを用いた顧客対応の自動化は、24時間体制のサポートが可能になり、人件費の削減につながります。また、社内データの整理や分析業務においても、生成AIは迅速かつ正確な対応を提供し、経営判断を支援します。
ただし、導入にかかる初期費用には、ソフトウェアのライセンス料やハードウェアのアップグレード、システムの開発費用、従業員のトレーニング費用が含まれます。これらのコストは企業にとって大きな負担となるため、補助金や助成金を活用して初期投資を最小限に抑えることが賢明な選択肢となります。
生成AI導入に活用できる助成金一覧
助成金とは
助成金とは主に厚生労働省が管轄するもので、「雇用促進」や「職場改善」「従業員のスキルアップ」などの活動を支援するために支給されるものです。
基本的に返済は不要です。
助成金制度の目的は、労働者の職の安定やスキルアップにあります。そのため、事業存続がむずかしい、休業を余儀なくされるといった状況にある場合に、労働者の職を安定させるために支援金が出るものです。
人材開発支援助成金
概要
新しい事業の立ち上げや、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーン・カーボンニュートラル化といった企業の革新に伴う人材育成を助成するものです。企業が持続的な成長を目指し、競争力を高めるための一助として、この制度は非常に有効です。
生成AIの活用はデジタルトランスフォーメーション(DX)に該当する可能性が高く生成AI導入にも活用できる助成金となっています
助成率
この制度の大きな魅力の一つが、助成率の高さです。中小企業の場合、訓練経費の最大75%が助成され、大企業でも60%が支援されます。また、訓練期間中に支払う賃金も助成の対象となり、中小企業では1人あたり1時間960円、大企業では480円が支給されます。このため、企業は大きなコスト負担を軽減しながら、従業員のスキルアップに取り組むことができます。
活用例
例えば、ある中小企業が先端技術(IoTやAI)活用を考えているとします。
しかし、現時点ではその技術に対応できる従業員が不足しているため、新しい技術の基礎および応用を学ぶための職業訓練を実施することを計画します。具体的には、AIの基礎知識や機械学習に関する30時間の訓練を実施し、4人の従業員が受講し受講費用が一人当たり25万円の場合、経費は100万円(25万円×4人)となります。
このケースでは、助成金を活用することで、訓練経費の75%にあたる75万円が助成され、賃金助成としてさらに115,200円(30時間×960円×4人)が支給されます。結果として、総経費の大部分をカバーすることができ、企業は新規事業の立ち上げに向けた人材育成を成功させることができます。
手続きの流れ
- 事業内職業能力開発計画の策定
企業はまず、事業内でどのような職業訓練を実施するかを計画します。この計画に基づき、「職業訓練実施計画」や「事業展開等実施計画」といった必要書類を作成します。 - 労働局への計画提出
訓練を開始する1か月前までに、管轄の労働局に所定の書類を提出します。この書類には訓練内容の詳細や対象者の一覧、訓練期間中の労働条件などが含まれます。 - 訓練の実施
訓練計画に基づいて、従業員に対する職業訓練を実施します。訓練期間中の費用は、企業が一旦全額負担する必要があります。 - 支給申請
訓練終了後、2か月以内に必要書類を労働局に提出して助成金の支給を申請します。申請時には、経費や賃金を証明する書類(出勤簿やタイムカード、振込通知書など)も併せて提出する必要があります。
働き方改革推進支援助成金
概要
「働き方改革推進支援助成金」の労働時間短縮・年休促進支援コースは、中小企業が働きやすい職場環境を整えるための重要な制度です。この助成金は、労働時間管理の効率化や年次有給休暇の取得を促進するための仕組み作りをサポートします。生産性向上を図りながら、労働環境を改善し、従業員の働きやすさを実現する企業に最適な助成金です。
助成率
この助成金では、助成対象となる取り組みに要した経費の一部が支給されます。具体的には、対象経費の合計額の3/4が助成され、常時使用する労働者が30人以下の中小企業では、補助率が4/5まで引き上げられます。助成金の上限額は最大で730万円に達し、企業が抱える労務管理の課題を解決するための多くの取り組みが対象となります。
活用例
AIによる業務の自動化で生産性向上
別の企業では、AI技術を活用してルーチン作業を自動化しました。具体的には、データ入力やレポート作成などの事務作業をAIにより自動化することで、従業員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を整えました。この取り組みにより、1人当たりの生産性が大幅に向上し、残業時間の削減にも成功しています。AI技術の導入は、業務の効率化だけでなく、従業員のワークライフバランスの改善にも寄与しています。
手続きの流れ
- 計画書の提出
最初に、企業は労働時間短縮や年次有給休暇の促進に向けた取り組みをまとめた「交付申請書」を作成し、最寄りの労働局に提出します。 - 取り組みの実施
助成金交付の決定後、計画に基づいて取り組みを実施します。事業の実施期限は令和7年1月31日です。この期間内に取り組みを完了させる必要があります。 - 支給申請
取り組み完了後、事業実施にかかった経費の支給を申請します。申請は、事業実施終了日から30日以内、もしくは令和7年2月7日までに行う必要があります。
業務改善助成金
概要
業務改善助成金は、企業が事業場内の最低賃金を引き上げ、生産性向上に資する設備投資を行った際に、その費用の一部を助成する制度です。中小企業や小規模事業者を対象とし、賃金の引き上げによって生産性向上を図る取り組みを支援します。この助成金は、2024年度(令和6年度)も引き続き提供され、最大600万円の助成が可能です。
助成率
助成される金額は、設備投資等にかかった費用に助成率を掛けて算出されます。具体的な助成率は以下の通りです。
- 事業場内最低賃金が900円未満の場合:助成率は9/10
- 事業場内最低賃金が900円以上950円未満の場合:助成率は4/5(生産性要件を満たす場合は9/10)
- 事業場内最低賃金が950円以上の場合:助成率は3/4(生産性要件を満たす場合は4/5)
助成金の上限額は、事業場内の最低賃金引上げ幅と労働者数に応じて異なり、最大で600万円まで支給されます。
活用例
ある小規模事業者では、従業員の労働時間の管理に多くのコストがかかっていました。そこで、AI技術を活用した勤怠管理システムを導入することで、業務効率が大幅に改善され、労働時間の短縮が実現しました。この取り組みにより、従業員の労働時間を削減しつつも、賃金の引き上げを行うことができました。
手続きの流れ
申請書の提出
企業は、事業場内最低賃金の引き上げ計画と、それに伴う設備投資等の計画を策定し、所定の様式で管轄の労働局に申請書を提出します。
助成金の交付決定
労働局による審査を経て、交付決定がなされます。交付決定後、企業は計画に沿ってAI導入などの設備投資を実施します。
事業実績報告と助成金の支給申請
事業が完了した後、労働局に事業実績報告と助成金支給申請書を提出します。審査を経て助成金が支給されます。
生成AI導入に活用できる補助金一覧
補助金とは
補助金とは主に経済産業省や中小企業庁、地方自治体が管轄するもので、「事業拡大」や「設備投資」などの活動を支援するために支給されるものです。
補助金制度の目的は、国や自治体が政策や事業を進めるため、またそれらの周知や取り組み促進のため、特定の産業の育成のため、地方創生のためなど、さまざまな目的を達成するために、企業の事業サポートとしての意味があります。助成金とは違い補助金は採択があるため要件を満たしたとして、採択されなければ活用ができないものとなります。
ものづくり補助金
概要
「ものづくり・商業・サービス補助金」は、中小企業や小規模事業者が新製品・サービスの開発や生産プロセスの効率化を目指す設備投資に対して、費用の一部を補助する制度です。この補助金は、生産性向上と持続的な賃上げを促進することを目的としており、AIや自動化技術などの革新的な取り組みにも適用されます。
令和5年度の補正予算では、特に中小企業の設備投資や省力化に焦点を当てた支援が強化されており、最大8,000万円の補助が受けられます。
対象要件
この補助金の対象となるには、以下の基本要件を満たす必要があります。
- 付加価値額:年平均成長率3%以上の増加を目指すこと。
- 給与支給総額:年平均成長率1.5%以上の増加を目指すこと。
- 事業場内最低賃金:地域別最低賃金に30円以上上乗せすること。
さらに、3~5年の事業計画に基づき、革新的な製品開発や生産プロセス改善、省力化を進める設備投資を行うことが求められます。
補助内容と支援枠
補助金は、事業者の取り組み内容や規模に応じて、以下のような支援枠が用意されています。
- 製品・サービス高付加価値化枠:最大8,000万円の補助
- 省力化(オーダーメイド)枠:最大1,250万円の補助
- グローバル枠:最大3,000万円の補助
- 成長分野進出類型(DX・GX)枠:最大2,500万円の補助
また、補助率は事業の規模により1/2から2/3まで適用され、特例事業者にはさらに上乗せが行われる場合があります。
活用例
ある中小企業では、工場内での物品搬送に多くの時間と人手が割かれていました。ここで、AIセンサーを搭載した自律走行搬送ロボットを開発・導入し、物品の自動搬送を実現しました。この取り組みにより、工場内の物流効率が劇的に向上し、従業員はより付加価値の高い業務に集中できるようになりました。
申請手続きの流れ
申請準備
GビズIDを取得し、補助金の公募要領を確認したうえで、電子申請システムを利用して申請します。ID取得には時間がかかるため、早めの手続きが推奨されます。
事業実施
交付決定後、3~5年の事業計画に基づいて、設備投資やシステム構築を実施します。実施後は、毎年、事業化状況報告を提出し、事業の進捗や成果を確認します。
実績報告と補助金支給
事業が完了した後、実績報告書を提出し、審査を経て補助金が支給されます。
IT導入補助金
概要
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が業務効率化やデジタルトランスフォーメーション(DX)を目指してITツールを導入する際に、その経費の一部を補助する制度です。補助金を活用することで、企業はITツール(ソフトウェアやクラウドサービスなど)を導入し、生産性を向上させることができます。また、インボイス制度やセキュリティ対策に対応する特別枠も設けられており、さまざまなニーズに対応しています。
補助率
- 通常枠: 補助率1/2以内、補助額は5万円以上150万円未満(1プロセス以上)または150万円以上450万円以下(4プロセス以上)
- インボイス枠(会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト): 補助率3/4または4/5(小規模事業者)、補助額は最大350万円
- セキュリティ対策推進枠: 補助率1/2以内、補助額は5万円以上100万円以下
- 複数社連携IT導入枠: 補助率3/4以内または2/3以内、グループでの導入に応じて補助額が変動
これらの助成率は、対象となるツールやサービスの種類、導入の枠に応じて異なり、企業の業務効率化を支援します。
活用例
ある小売業者では、AIを活用した在庫管理システムを導入しました。このシステムは、過去の販売データをもとに在庫状況を自動で分析し、適切な発注を提案します。これにより、在庫切れや過剰在庫が大幅に減少し、無駄なコストを削減することができました。また、業務の効率化に伴い、社員の作業負担が軽減され、さらにAIの予測精度が向上することで、生産性が向上しました。
申請手続きの流れ
gBizIDプライムの取得
申請に必要な「gBizIDプライム」を取得します。この手続きには時間がかかる場合があるため、早めに準備することが推奨されます。
IT導入支援事業者との連携
事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組み、企業の課題に合ったITツールを選定します。
交付申請
ITツールやサービスの選定後、交付申請を行います。申請時には、導入するツールの詳細や見積もりなどの情報を提出します。
交付決定・事業実施
交付決定後、実際にITツールを導入し、導入が完了したら事業実績報告を行います。この報告が完了すると、補助金が支給されます。
小規模事業者持続化補助金
概要
「小規模事業者持続化補助金」は、地域の雇用や産業を支える小規模事業者を対象に、経営計画に基づく販路開拓や経営改善の取り組みを支援する制度です。持続的な発展を目指し、店舗の改装や広告掲載、展示会出展など、事業の成長を促進するための経費を補助します。特に、インボイス発行事業者への転換支援や賃金引上げに取り組む事業者に対しては、補助額の上乗せが行われます。
補助率
- 通常枠: 補助率2/3
- 賃金引上げ枠: 補助率2/3(赤字事業者は3/4)
- インボイス特例: 免税事業者からインボイス発行事業者への転換で、補助上限額に一律50万円の上乗せ
補助上限額は通常枠で50万円、特別枠では200万円まで支給され、インボイス特例の要件を満たす場合は最大250万円まで補助が可能です。
活用例
飲食店経営者が、労働時間の管理やスタッフのシフト管理にAIを活用した労務管理システムを導入。これにより、労働時間の把握が正確になり、従業員の働き方の改善にもつながりました。また、従業員のシフト調整が効率化され、経営者が他の業務に集中できる環境が整いました。
申請の流れ
事業計画の作成
小規模事業者は、自ら経営計画を策定し、商工会や商工会議所の支援を受けながら販路開拓や業務改善に取り組みます。
補助金の申請
経営計画に基づく販路開拓や設備投資の内容を詳しく記載し、補助金の申請を行います。申請期限は2024年5月27日です。
交付決定と事業実施
交付が決定した後、実際に事業を実施し、事業が完了したら実績報告書を提出します。補助金の支給は、この報告書の審査を経て行われます。
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