「AIで図面を描けたら、どれだけ楽だろう。」
そう思ったことがある方は少なくないはずです。生成AIの進化により、文章や画像だけでなく、図面作成の領域にもAI活用の可能性が広がっています。
とはいえ、現場の実務において「本当にAIで図面が描けるのか?」「CADやBIMとどう連携できるのか?」という疑問を持つ方は多いでしょう。
本記事では、ChatGPTなどの生成AIを使って、実際に図面をどこまで描けるのかを検証しつつ、使い方のポイントや導入手順、注意すべきリスクまで丁寧に解説します。
AIで図面作成はどこまで可能か?現状と限界
結論から言えば、ChatGPT単体で図面ファイル(DXFやSVG)を生成することは可能です。ただし、それは「コードとしての出力」であり、CADで直接操作するようなGUIベースの作図ではありません。
AIが得意とするのは、以下のようなテキストベースの支援です:
- DXFコードやSVGコードの生成
- AutoCAD用のAutoLISPマクロ作成
- FreeCADやFusion360向けPythonスクリプト出力
- 寸法計算やパラメータ整理、設計要件のチェックリスト作成
一方、AIだけでは困難な領域もあります:
- 複雑な3Dモデリング
- 建築基準法など法規への自動対応
- CADのレイヤー管理やスナップ設定
- 正確な図面修正・整合性確保
つまり、AIは図面の「描画者」ではなく「アシスタント」。プロンプト(命令文)を通じてコードを出力させ、それをCADに読み込ませることで、初めて図面として視覚化されます。
AIに図面作成を指示する方法【プロンプト・条件設定】
ChatGPTに「図面を描いて」と頼んでも、あまりに曖昧すぎて、期待通りのアウトプットは得られません。
実務で求められる図面出力には、明確で具体的な指示=プロンプトの設計がカギとなります。
良いプロンプトに必要な要素
以下のような条件を盛り込むことで、AIはより実用的な図面コードを生成できます:
要素 | 説明 | 例 |
---|---|---|
寸法 | 長さ・高さ・半径など具体的な数値 | 200mm × 100mm |
スケール | 実寸 or 縮尺指定 | 1/100スケール、1:1 |
図形の種類 | 長方形、円、線分、寸法線など | 「直径100mmの円」 |
座標 | 始点、終点、中心点など | 中心座標(400,300) |
出力形式 | DXF, SVG, AutoLISP, Pythonなど | DXF形式で出力 |
プロンプトの例(実用的):
「幅800mm、高さ2000mmのドアを、中心座標(1000,500)に描画するDXFコードを出力してください。レイヤー名を『建具』に設定し、スケール1:1で、単位はmmとしてください。」
このように、CADオペレーターや設計者が普段考えているロジックや仕様書の一部をそのまま文章化する感覚で指示を出すと、精度の高い出力が得られます。
逆に、「長方形を描いてください」や「ドアの図面を作成して」など、あいまいな表現ではChatGPTも困ってしまい、出力が不完全・不正確になります。
実務ポイント:
- 位置関係(座標)とサイズ感(寸法)を明示する
- 出力対象の形式・用途を指定する(例:DXF→CAD取り込み)
- レイヤー・線色・線種の指定も可能(管理効率UP)
- 法規や図面枠の有無は別途補足が必要
このように、プロンプト設計は「会話」ではなく「仕様指示書」のような感覚で書くのがポイントです。
設計者の頭の中にある条件を“すべてテキストで洗い出す”イメージで取り組むと、ChatGPTは非常に頼もしい図面生成アシスタントになります。
ChatGPTだけで図面を描くときの「よくあるミス」と修正ポイント
よくあるミス:
- 「戻り線」が抜けていて図形が閉じていない
- 寸法単位(mm/inch)を明示しないためスケールが狂う
- 始点や中心座標が曖昧
修正プロンプト例:
- 「長方形の4辺を順に描き、最後に始点に戻って閉じてください」
- 「単位はmm、スケールは1:1で描画してください」
- 「すべての座標を明示してください」
→ プロンプトは“プログラマーに指示する”つもりで、構造的・明確に書くことが成功の鍵です。
実践フロー:AI図面作成のステップ
- ChatGPTにDXFまたはSVGコードを生成させる
- コードをメモ帳などにコピーして保存(.dxfや.svg)
- CADソフトに読み込み、図形が正しく描画されるか確認
- 修正が必要なら、プロンプトを見直して再生成
- 必要に応じて手作業で微調整や補正を加える
まずは「矩形」「円」「線分」「寸法線」など基本図形から始めるのがおすすめです。
図面AI導入における注意点
- 図面の精度保証はAIには任せられない
- 法規や安全基準は必ず人間が確認する
- 企業情報や機密データをAIに入力する際は十分な配慮を
- プロンプト設計には慣れが必要。最初はトライ&エラー前提で
これからの展望:AIと図面作成の未来
今後は、以下のような技術革新が加速していくと予想されます:
- 自然言語でCADを操作する「会話型設計」
- スケッチ → 3Dモデリングへの自動変換
- AIと法規チェックの統合
- BIMや構造計算ツールとの連携強化
しかし現段階では、人間の設計意図やチェックが必要不可欠です。AIを道具として使いこなすために、技術の本質を理解することが重要です。
まとめ:まずは小さな図面から、ChatGPTで試してみよう
図面をAIで描く——それは未来の話ではなく、もう始められる現実です。とはいえ、いきなり全てを任せるのではなく、「小さく試して」「うまく組み合わせて」使うことが成功の鍵です。
- ChatGPTは、プロンプト次第で図面の一部を描くことができる
- コード生成→CAD反映の流れは、誰でもすぐ試せる
- 最初の一歩は、長方形や円などの基本図形から
AIは魔法の道具ではなく、優れた助手です。あなたの創造力と設計力を引き出すパートナーとして、ぜひ図面AIの世界を一歩踏み出してみてください。
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