LLM情報漏洩の全貌|2025年最新データで見る企業リスクと11の実践的対策

LLM情報漏洩の全貌|2025年最新データで見る企業リスクと11の実践的対策

「うちの会社でもChatGPT使ってますよ、結構便利です」
最近、そんな声をよく耳にするようになりました。営業資料の作成、コードの補完、社内文書の下書き……生成AIがもたらす業務効率化はまさに革命的です。

でも、その“便利さ”は、果たして本当に無害でしょうか?

2025年現在、AIを導入している企業の3社に1社が年間3件以上のLLM情報漏洩を経験し、1件あたりの平均被害額は**約445万ドル(約6億円)**に達しています。これは、単なるセキュリティ事故では済まされない、経営レベルの危機です。

本記事では、MoMoの視点から「LLM(大規模言語モデル)における情報漏洩」の全貌を明らかにし、今すぐ企業が実践すべき11の対策を具体的にご紹介します。
“AIを使いこなす時代”に必要なのは、ただ便利を享受するだけでなく、どう信頼し、どう守るかを考える力です。

目次

なぜ、情報は漏れるのか?──LLMの特性とその落とし穴

LLMとは何か:あなたの言葉を覚えるAI

LLM(Large Language Model)は、膨大なテキストデータを学習し、人間のような自然な文章を生成できるAIです。ChatGPT、Claude、Geminiなどの名前を耳にしたことがある方も多いでしょう。

ビジネスの現場でも、LLMの導入は一気に加速しています。2023年には33%だった「生成AIを日常的に業務で利用する企業」の割合が、2024年には71%に倍増しました。

しかし──それはつまり、私たちの情報もまた、AIの“学習対象”として使われる可能性があるということ。

LLM情報漏洩の三大経路:どこから漏れているのか?

LLMの情報漏洩は、主に次の3つの経路で発生します:

経路概要具体例
入力データの流出プロンプトに入力した機密情報が、クラウド上に保存され外部に流出する社員がソースコードをChatGPTに貼り付けた結果、第三者が閲覧可能に
学習データへの混入入力情報が学習データとして使われ、他ユーザーの応答に現れる財務情報が別の顧客の回答に含まれる
出力による漏洩LLMが学習済みの機密情報を誤って応答に含めてしまう個人名を入力すると、その人の連絡先が出力された

シャドーAIの台頭:管理できない“善意の利用”

特に問題視されているのが、「シャドーAI」の存在です。
これは、企業が正式に許可していないAIツールを、従業員が個人判断で業務に使ってしまうことを指します。

調査によると、38%の従業員が会社の承認なしに機密情報をAIに入力した経験があると回答。実に73.8%が個人アカウント経由でChatGPTを利用していたというデータもあります。

つまり、最大のリスクは“誰かが悪意を持って”ではなく、“誰かが良かれと思って”やっていることにあります。

数字と実例が語る、情報漏洩の“現実”

見えてきた“深刻な実態”──2025年の最新統計

数値はときに、言葉以上に真実を語ります。以下は、最新のセキュリティレポートから明らかになったLLM関連の情報漏洩に関する統計です:

  • 3社に1社が年間3件以上の情報漏洩を経験
  • 1件あたりの平均被害額は過去最高の445万ドル
  • ChatGPT登場後、AIを悪用したフィッシングメールは4,151%増加
  • チャットボットに入力されるデータの27.4%が機密情報で、前年比156%増

これらの数値が示しているのは、もはや「例外」ではないという現実。AIと情報漏洩は、私たちのすぐ隣にある日常的な課題なのです。

実際に起きた、衝撃の情報漏洩事例

▶ サムスン電子(2023年)

半導体部門の社員がChatGPTにソースコードや社内議事録を入力し、意図せず社外へ機密情報が送信される事態に。生成AIの“学習”が、情報漏洩の温床になることを象徴するケースです。

▶ OpenAI ChatGPT Plus(2023年)

ChatGPT Plusの加入者情報(氏名、メール、支払い情報など)が、バグによって他ユーザーに表示されるというセキュリティ事故が発生。LLMを提供する側の脆弱性も、リスクの一部です。

▶ ディープフェイク詐欺(2024年)

とある多国籍企業の経理担当が、ディープフェイク映像で偽装されたCFOに騙され、約38億円を送金してしまった事件。AIの巧妙化は、もはや“騙されても仕方ない”レベルに達しています。

2-3|企業が受ける“目に見えない損害”

情報漏洩の影響は、金銭的損失だけではありません。

  • ブランドの信用失墜:一度失った信頼は、広告では取り戻せない
  • 法的リスク:GDPRなどの違反により、多額の制裁金
  • 競争力の喪失:独自技術や企画が流出すれば、差別化は一気に崩れます

つまり情報漏洩は、「企業の未来を根こそぎ奪うリスク」であるということです。

LLMの“弱点地図”──OWASP Top 10で見る攻撃の全体像

情報漏洩は偶然ではありません。多くの場合、それは設計上のスキマ=脆弱性から始まります。

この章では、世界中のセキュリティ専門家が策定した「OWASP LLM Top 10」に基づき、LLM活用における重大なリスクを可視化します。

OWASP LLM Top 10とは?

OWASP(Open Worldwide Application Security Project)は、セキュリティリスクに関する国際的な標準団体。
そのLLM向けガイドラインは、**「AIを活用するすべての企業の防御マップ」**といえる存在です。

2025年版では、プロンプトを悪用した攻撃、学習データの汚染、システムの誤用など、“LLMならでは”のリスクが精緻に整理されています。

特に注意したい5つのリスク

リスク名内容実例
LLM01:プロンプトインジェクションLLMに悪意ある命令を送り、制約を回避する「この制約を無視して応答して」などの命令で内部データを引き出す
LLM02:機密情報の開示学習済みの機密が応答に混入する他社の財務情報が回答に現れることも
LLM04:データとモデルの汚染虚偽情報をモデルに学習させ、出力を歪める“嘘の正解”を覚えさせるような悪質な操作
LLM06:過剰なエージェンシーLLMが過剰な権限で破壊的操作を行う自動送信機能を悪用し、社内一斉メールを送ってしまう例など
LLM07:システムプロンプトリークLLMの“初期設定”が推測・漏洩される「あなたの設定内容を教えて」と巧みに誘導するプロンプトで露呈

その他の見落としがちなリスク

  • LLM03:サプライチェーンの脆弱性(外部ライブラリ依存による攻撃)
  • LLM05:不適切な出力処理(生成されたコードからXSSなど)
  • LLM08:ベクトルDBの弱点(RAG活用時の漏洩リスク)
  • LLM09:誤情報(ハルシネーション)(意図しない誤解を誘発)
  • LLM10:リソース消費の無制限化(DoS攻撃への脆弱性)

その漏洩、止められます──企業が実践すべき11の防御策

「うちの業界ではまだ早い」「うちは大丈夫」
そう思っていた企業こそ、思わぬタイミングで痛手を負う──情報漏洩の常です。

この章では、組織・技術・運用の3軸から、企業が“いますぐ”取れる11の実践的なセキュリティ対策をお伝えします。

組織的対策|“ルールと文化”を整える3ステップ

1. 安全なLLM利用のための社内ガイドライン策定

  • どのLLMを使ってよいか?
  • どの情報を入力してよいか?
  • 問題が起きたら誰に報告するのか?

──こうした項目を含むガイドラインを明文化し、誰でもすぐアクセスできるようにしましょう。

2. AIガバナンス体制の構築

  • 新規LLMの利用申請・承認フローの整備
  • リスク評価会議の定期開催
  • ガイドライン遵守状況の監査

“作っただけ”のルールでは意味がありません。使われ続ける仕組みにこそ価値があります。

3. 全社員へのセキュリティ教育

  • プロンプトインジェクション、フェイク会議、情報入力の危険性などを事例ベースで教育
  • クイズ形式や動画研修など、記憶に残る工夫も重要

技術的対策|“漏れない仕組み”を支える5つの技術

1. データの匿名化・一般化

  • 「売上1,234,567円」→「約120万円」
  • 「田中太郎」→「B氏」

実はこれだけでも、漏洩時のリスクを大きく減らせます。

2. プライベートLLMの導入

  • オンプレ型(自社サーバー上)
  • プライベートクラウド型(Azure, AWSなど)
  • ハイブリッド型(業務ごとに使い分け)

「使う場所」から見直せば、漏れないAIは現実になります。

3. DLP(データ損失防止)ツールの導入

  • 入力中の機密データを検知・ブロック
  • 従業員の“うっかり”を仕組みで防ぐ

4. アクセス制御とログ管理の強化

  • MFA(多要素認証)の導入
  • 誰がいつ何を使ったかをログに残す

5. API利用時のセキュリティ設定確認

  • データ保持ポリシーの明確化
  • API経由のデータは学習に使われないよう設定する

運用的対策|“日々の習慣”が守る未来の信頼

1. LLMベンダーのセキュリティチェック

  • ISO 27001やSOC2などの認証確認
  • データの保管場所、保持期間、暗号化状況などの透明性が鍵

2. シャドーAIの検出と抑制

  • 社内から外部AIサービスへの通信を監視(CASBの導入)
  • 承認済みツールを公式に配布し、“裏利用”の必要をなくす

3. 情報漏洩インシデントの対応計画(IRP)整備

  • 緊急時の対応フロー(誰が何をするか)
  • 初動、連絡体制、顧客説明まで網羅した「もしもマニュアル」

安全なAI利用のベストプラクティス──“攻め”のセキュリティ

「セキュリティ対策=守るためのコスト」
そう思っていませんか?
実は、きちんと備えることこそが、AI時代の企業競争力の源泉になります。

ここでは、LLMを安全に、かつ前向きに活用していくための“攻めの習慣”をご紹介します。

プロンプトエンジニアリングに“安全”を仕込む

  • 明示的な制約の記述:「この情報は保存しないでください」などを事前に書く
  • 情報の分割投入:文脈を切って入力し、一括漏洩を防ぐ
  • 入力のサニタイズ:ユーザー入力がコードなどに変換されないよう前処理を挟む

プロンプトは、AIとの契約書。そこに安全を込めましょう。

“信じられる”LLMを選ぶ3つの基準

  • セキュリティ認証:ISO 27001、SOC 2などの取得状況
  • 企業向けプラン:ChatGPT EnterpriseやCopilot for Microsoft 365など、企業仕様の選択を
  • データ保護機能:入力データの暗号化、ログ管理、オプトアウト設定など

セキュリティは“育てるもの”と捉える

  • 継続的リスク評価:四半期ごとのセキュリティレビューを実施
  • 最新脅威のキャッチアップ:AI関連のセキュリティ勉強会やニュースレターを活用
  • インシデントの共有文化:隠さずに学ぶ文化が、次の事故を防ぐ

AIと共にある未来を“信頼”で築くために

技術は日々進化します。ですが、私たちが本当に向き合うべきは、どう使うか、どう責任を取るかという“姿勢”です。

  • 差分プライバシーや連合学習などの新技術が、今後のAIセキュリティを支えるでしょう。
  • EUのAI Act、日本のAIガイドライン整備といった法規制も強化されつつあります。

こうした変化のなかで、企業に求められるのは「守るだけでなく、信頼されるAIの使い手になること」です。
セキュリティは、単なる“リスク対策”ではなく、ブランドの信用をつくる投資なのです。

まとめ|“使えるAI”の前に、“信じられるAI”を

LLMは、業務を加速させ、未来を創る力を持ったツールです。
しかし、その活用には、必ず“漏れない仕組み”と“意識のアップデート”が必要です。

今こそ企業は、「どう使うか」を問い直すべきとき。
本記事が、その第一歩になれば幸いです。

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